数年間ずっと思い悩みながら、まったく形にできなかった脚本が、Fable 5との数時間の対話で完成しました。
題材にしたのは、わたしの最推しキャラクターである「CryptoNinja(クリプトニンジャ)」の「紫苑(しおん)」です。
わたしは数年前から、紫苑を主人公にした外伝を作りたいと考えていました。
設定を書いたメモ、過去に作った短い漫画や小説、頭の中に浮かぶ断片的なシーンの数々はありました。
それでも、ひとつの脚本として完成させることができませんでした。
「過去に何があったのか」
「敵は誰なのか」
「最後に何を選ぶのか」
物語の背骨になる部分が、どうしても埋まらなかったからです。
今回、その止まっていた構想を、Fable 5と一緒に整理しました。
プログラミングのような専門スキルは使っていません。
わたしがやったのは、手元にある資料を添付して、チャットで相談することだけです。
この記事では、Fable 5と脚本を作るなかで感じた魅力をお伝えします。
「余白」が残されているCryptoNinja
本題に入る前に、CryptoNinjaというIPについて、簡単にご紹介します。
CryptoNinjaには、キャラクターのビジュアルと基本的な設定があります。
一方で、物語のすべてが細かく決められているわけではありません。
創作できる「余白」が、意図的に残されています。
ガイドラインの範囲内であれば、アレンジを加えた二次創作も歓迎されています。
自由に作れるのは、とても楽しいことです。
ただ、「何を作ってもいい」という状態は、「何を作るかを自分で決めなければならない」ということでもあります。
紫苑には、次の原作設定があります。
「幼い頃に集落が鬼に襲われ、令(れい)が面倒を見ている。人見知りだが、餡音(あんね)にはなついている」
わたしにとって、この余白は絶妙でした。
集落では何が起きたのか。
なぜ紫苑は生き残ったのか。
彼女は、その出来事をどう受け止めて生きてきたのか。
わたしは長いあいだ、これらについて自分なりに考え続けてきました。
もちろん、答えはひとつではありません。
いろいろな人が、それぞれの物語を考えていいと思います。
今回、わたしが作った物語も、そのなかの一説に過ぎません。
だからこそ、Fableと一緒に「わたしが考える紫苑の物語」を形にしていく題材として、とても合っていました。
AIに書かせるのではなく、聞き出してもらう
本題の前に、ひとつだけ大事な前提があります。
AIに物語の作成を頼めば、簡単な指示でもそれらしいものは出せます。
ただ、それを読んでも、当然ながら自分の解釈や表現とはかけ離れていることが多いと思います。
今回うまくいったと感じたのは、まったく異なるアプローチだったからです。
「AIに物語を書かせる」のではなく「自分の中にある物語を、AIに聞き出してもらう」という作り方でした。
Fableは、最初から完成した脚本を出してきたわけではありません。
質問をされ、選択肢を提示され、物語における重要事項は、ひとつずつ決めていきました。
決めきれない部分では、Fableから最適な提案や助言をもらう。
納得できなければ、修正をお願いする。
こうしたやり取りを重ねたので、完成した脚本は、自分の解釈が反映された作品だと感じられました。
散らかった資料を棚卸ししてくれる
資料を渡すとき、依頼文の中で「情報を4種類に分けて整理してほしい」とお願いしました。
・CryptoNinjaの原作にある既存設定
・わたしが追加した独自設定
・まだ決まっていない部分
・AIからの新しい提案
の4種類です。
最初の返答は、この分類を踏まえたうえで、7つの項目に整理されて返ってきました。
世界観の理解。
人物の相関。
主人公・紫苑の核。
原作設定と接続できそうなポイント。
資料だけでは判断できない部分。
先に決めるべきことの優先順位。
そして、現時点で有望な方向性。
特にありがたかったのは、「矛盾している部分」「まだ判断できない部分」を、勝手に埋めずに明示してくれたことです。
長期間考えている作品ほど、確定した設定と思いつきのメモが混ざっていきます。
自分では決めたつもりでも、実はまだ曖昧だった部分もあります。
反対に、悩んでいるつもりだったものが、過去の資料ではすでに決まっていることもあります。
そこが仕分けされることで、「何が決まっていて、次に何を決めればいいのか」が見えるようになりました。
数年間散らかっていたわたしの頭の中が、最初の一往復で「地図」になった感覚です。
質問によって、抜けていた部分が見つかる
Fableとのやり取りでは、回答の最後に数個の質問が提示されました。
質問に答えていくと、自分が決められていなかった部分が見えてきます。
わたしの場合、脚本が完成しなかったのは、物語を書く力だけの問題ではありませんでした。
決める必要がある論点を、自分で特定できていなかったのだと思います。
Fableからは、ひとつの論点に対して複数の選択肢が提示されました。
それぞれの案には、メリットとデメリットも添えられていました。
このように判断材料が並ぶので、自分が何を大切にしたいのかを考えやすくなります。
もちろん、すべての質問に答えられたわけではありません。
選べないこともあり、分からないこともありました。
そういうときは、「物語の質が最も上がる形で進めてください」とお願いしました。
任せた部分については、Fableが理由と一緒に提案を返してくれます。
あとから違和感が出た場合は、変更もできます。
なぜその案が物語に合うのかを言葉にしてもらえるので、やり取りそのものが脚本づくりの勉強にもなりました。
数年間決まらなかった「過去の真相」
紫苑の物語でいちばん決まらなかったのは、じつは敵の設定よりも、もっと根本の部分でした。
紫苑の集落は、なぜ滅んだのか。
紫苑は、何者なのか。
彼女に特別な血筋や力を持たせれば、理由は簡単に作れます。
ただそれでは、「選ばれし主人公」の物語になってしまう。
かといって、まったくの偶然にすると、物語が動かなくなる。
わたしはこの間で、ずっと止まっていました。
Fableはここで、紫苑の出自の「特別さ」を弱・中・強の3段階に分けて、それぞれの場合に物語がどう変わるかを比較してくれました。
そして、その選択肢に答えようと自分の考えを書いているうちに、わたしの中から一つの整理が出てきました。
「選ばれたから生き残ったのではなく、生き残ってしまったことで特別になった」
Fableはこの言葉を重要な指針として拾い上げ、以後の設計の軸にしてくれました。
答えはAIが出したのではなく、質問に答えていくうちに、自分の中から出てきたのです。
「聞き出してもらう」というのは、こういうことでした。
そして、この指針のもとで固まった一族の設定が、今回いちばんすっきりした部分でした。
「境のほとりで鬼面と朱の文化を持ち、代々その土地の境を鎮めてきた民」
鬼の口を模したマスクや、目元の朱。
原作の紫苑のデザインにあって、ずっと気になっていた要素です。
そのバラバラだった断片が、「鬼を討つ民ではなく、鎮めて還す民」という一族の文化として、一本につながりました。
マスクは、鬼の証ではなく、失われた故郷の文化を受け継ぐ象徴になる。
数年間もやもやしていた妄想の断片に、構造が与えられた瞬間でした。
出自の方向が決まると、連動して「敵」も決まりました。
明確に憎むべき悪役を置くと、物語が単純になりすぎる。
一方で、敵が存在しなければ、物語を動かしにくい。
この二択で止まっていたところに、Fableが提示したのは別の構造です。
「原因となった人物は存在するが、倒すべき敵ではない」
さらに、その人物を、主人公と同じ喪失を抱えながら、逆の道を選んだ「暗い鏡」として設計する案も提示されました。
わたしには、この発想はありませんでした。
一人で考えていると、知らないうちに限られた選択肢の中で悩み続けてしまうことがあります。
対話によって、自分の中にあった答えを引き出してもらえることもあれば、自分の外側にある案を見つけられることもある。
その両方が起きたのが、この「過去の真相」でした。
長い物語の整合性を覚えていてくれる
また、長い物語を作るときに難しいのが、設定の整合性です。
序盤で決めた設定と、終盤の展開が矛盾することがあります。
物語を進めるうちに、キャラクターの考え方が変わってしまうこともあります。
自分で決めた設定を忘れる場合もあります。
その点も、Fableがカバーしてくれました。
過去に決めた内容を踏まえて、新しい案が以前の方針と合っているかを確認しながら進めてくれたのです。
わたしが魅力を感じた設定案について「先に確定した方針と衝突する」と指摘されたこともあります。
単に否定するのではなく、どの設定と衝突するのかも説明されました。
保留にした論点についても、棚卸ししたリストの中で追跡してくれます。
最終的には、決定した内容が整理され、凡例の付いた設定資料とシナリオ構成書になりました。
漫画や映像、ゲームなど、次の制作に使える状態までまとめてくれました。
必要なのは、完成した資料ではない
Fableで脚本づくりを始めるために、高度な準備は必要ありません。
手元にある資料を、未完成のままでも構わないので添付します。
そのうえで、決まっていることと、悩んでいることを伝えます。
あとは、提示される質問に答えていくだけです。
資料の中に矛盾があっても、メモ書きが混ざっていても大丈夫です。
まずは、現在の状態を見てもらうことから始められます。
提案された内容に違和感があったら、どの点が違うと感じたのか、どのようにしたいのかを伝えます。
違和感を言葉にするほど、設計は自分が作りたい物語に近づいていきます。
参考までに、最初に送る依頼文は、次のような数行で十分です。
添付の資料をもとに、この作品の脚本を一緒に考えてください。
完成した物語をいきなり作らないでください。
まず資料を整理して、決めるべきことを質問しながら、一つずつ一緒に決めていってください。
重要な設定は勝手に確定せず、選択肢をメリット・デメリット付きで提示してください。
この数行だけで、この記事で紹介してきた進め方になります。
ChatGPTで依頼文を整えてからFableに渡した
今回、やってよかったと思うことも共有します。
今回の脚本づくりで、わたしはFableだけを使ったわけではありません。
実は、Fableに最初に送る依頼文は、ChatGPTに整えてもらいました。
その後も、Fableから返ってきた内容をChatGPTに共有し、次に送る返答を整理してもらいました。
脚本づくりでは、扱う文章の量が増えていきます。
伝え漏れや言葉の行き違いがあると、あとで設定のズレにつながります。
一度ChatGPTで整理してからFableに渡すことで、自分が伝えたいことを確認しながら進められました。
もちろん、この方法を使わなくても始められます。
まずは資料を添付して、先ほどの数行の依頼文を送るだけでも十分です。
わたしの場合は、数時間でシナリオ構成書まで進みましたが、何日もかけて考えながら進める方法もあります。
自分に合うペースで進められるのも、チャットで作る利点だと思います。
断片的な妄想を、一本の物語にする
わたしは今でも、最初から完成した物語を思いつけるわけではありません。
浮かんでくるのは、場面や設定などの断片です。
今回変わったのは、その断片を整理し、一本の物語につなげる相棒ができたことでした。
何年も寝かせたままの構想がある方。
好きなキャラクターを主人公にして、物語を作ってみたい方。
まずは資料をチャットに添付して「一緒に考えてください」と伝えてみてください。
保留フォルダの中の物語は、たぶんあなたが思っているより、完成に近い場所にいます。
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Fable 5との対話を通して、お寿司さんの中から生まれた指針と、そこから丁寧に導き出された設定を、ワクワクしながら拝見いたしました。
紫苑ちゃんの原作デザインに込められた要素とのつながりも、とても興味深く感じました。
CryptoNinjaの原作設定を大切にしながら、Fable 5との対話によって新たな物語が生まれていく過程に、深い魅力がありますね。
これから紡がれていく、さまざまな紫苑ちゃんの物語も、心より楽しみにしております。